母乳育児成功の秘訣

母乳育児を続けていくためのスタートはできるだけ早く切りましょう。まずは母乳で育てていく意思が必要です。母乳のマッサージはあまり早くから行うと早産の危険性がありますから、37週以前はしないほうがいいでしょう。けれども、母乳マッサージ以外にも、母乳育児への準備はたくさんあるのです。実際に赤ちゃんが生まれてからスタートを切るお母さんもいます。それでは母乳育児を始めるのに遅すぎるということではありません。けれどさまざまな知識やイメージがあったほうが、より母乳育児をスムーズに進めていくことができます。

 

出産直後は母乳がなかなか出てくれません。そのとき、あせってすぐにミルクに切り替えてしまわなくてもいいのです。母乳育児のスタートは、お母さんと赤ちゃんの共同作業です。赤ちゃんが吸ってくれて、初めて母乳は豊かに流れ出します。そう知っていれば、余計な心配を抱え込むこともありません。母乳を赤ちゃんにあげている間、食事はどんなふうに気をつければいいのか?お酒やタバコはどうしよう?お乳の消毒は?母乳育児を進めていくにあたって、特に最初の出産を控えたお母さんは、疑問でいっぱいです。

 

出産をする病院の妊産婦指導の中で教えてもらえる機会もあります。保健所の相談窓口を利用することもできます。桶谷式の母乳育児相談室を訪ねることもできます。妊娠に関する書籍やインターネットでの情報もあります。自分が赤ちゃんと送る母乳育児のイメージを持ちましょう。そして、必ずできると自信を持ちましょう。出産が近づいてきたら、いよいよ母乳マッサージをして、赤ちゃんと会える日を待つのです。

赤ちゃんが生まれて最初に出てくる母乳を初乳といいます。生後2週間ほどすると出てくる成乳と違い、粘り気があり色も黄色がかっています。母乳育児において初乳は特別に大切なものです。なぜ初乳がそんなに大切なのでしょう。初乳には感染から赤ちゃんを守る免疫物質が大量に含まれているからです。免疫物質(分泌型免疫グロブリン)は赤ちゃんの胃や腸の粘膜にワックスを塗ったように広がって、細菌やウィルス、アレルギー物質が体内に侵入することを防ぎ赤ちゃんを守ってくれます。

 

無菌状態のお母さんのお腹の中から誕生したばかりの赤ちゃんは、そのままでは細菌やウィルスに抵抗力がありません。お母さんがどんなに清潔を心がけても、いったんお母さんの体内から出てしまえば、赤ちゃんの周りにはさまざまな雑菌が存在します。初乳を飲ませることで、赤ちゃんはおよそ6ヶ月間感染症から守られるほどの強い抵抗力を持つことができます。その、守られている間に、赤ちゃんは自分で自分を守っていく力を育てていくのです。

 

成乳にも免疫物質は含まれていますが初乳に含まれる量に比べれば、ずっと少なくなっています。まるで初乳で粘膜をしっかりカバーした後は、こまめにメンテナンスを繰り返していくような、すばらしいシステムです。母乳を飲ませている間中、それはずっと続くのです。神秘的とも言えるほどの不思議な営みではないでしょうか?お母さんから赤ちゃんへの最初のプレゼントとも言える初乳を、必ず飲ませてあげましょう。

出産後すぐに溢れるほど母乳が出てくる人は、まず見当たりません。母乳がたくさん出てくるようになるのは、まさに赤ちゃんとの共同作業です。そして赤ちゃんも生まれてすぐに上手におっぱいを吸うことはできません。たくさんおっぱいが出ないお母さんに、おっぱいが上手にすえない赤ちゃんは頻繁に「お腹がすいたよ」と泣きながらメッセージを送ります。お母さんは一日に何度でも、赤ちゃんが泣いたら母乳を上げてください。赤ちゃんが一生懸命おっぱいを吸えば、それが刺激となって母乳がどんどんおっぱいの中に作られていくのです。すぐに赤ちゃんがお腹いっぱいになるくらいのおっぱいが作られるようになります。

 

母乳はミルクに比べて消化がいいため、短時間にお腹が空いてしまいます。さらに、赤ちゃんが飲んでいる量が測れないため、生後何ヶ月だとどのくらい、という一般にミルクの缶に書いてあるような基準はありません。ですから、母乳保育では授乳の回数はミルクで育てるよりは多くなります。けれど、その授乳こそが赤ちゃんとお母さんのもっとも望ましいスキンシップなのです。

 

授乳のとき、お母さんは赤ちゃんを抱っこしてじっと目を見つめます。赤ちゃんにたくさん話しかけてください。そしてそれが母乳であるならば、赤ちゃんに伝わるお母さんの体温は、より温かく、結びつきはよりしっかりしたものになっていくことでしょう。授乳の回数が多いということは、それだけたくさんの赤ちゃんとのスキンシップが取れることと考えていけたら、素敵ですよね。

母乳で赤ちゃんを育てていきたいと考えているお母さんは、出産後、母子同室となる病院を選ぶのが理想です。赤ちゃんがお腹の中で育っていく過程でも母性は育っていくものですが、出産後1〜2週間が母性の成熟にはとても大切な時期にあたります。赤ちゃんをしっかり抱いて語りかけ、おっぱいをあげることはもっとも大切なスキンシップです。その時間の中で、お母さんはわが子を守っていく強い母性を持つようになっていきます。基本的な信頼関係は、最初の3日が重要であるという説もあるほどです。

 

また、赤ちゃんの体内では、カテコーラミンというホルモンが生後30分をピークに分泌されます。これは赤ちゃんの意識をしっかりと目覚めさせ、母親を認識していくためのホルモンです。このことからも、お母さんと赤ちゃんは離してはならず、一緒にいることが自然にかなっているといえるでしょう。

 

もちろん、母乳保育を目指しているものの出産予定の産院が母子同室ではない場合もあります。その病院の医師との信頼関係や通院距離、そして出産を控えて転院は難しいなど、母子別室の出産をせざるおえない人もいるでしょう。医師にまず自分の意思を伝え、できるだけ赤ちゃんとのスキンシップを求めていけばいいのです。子育ての中ですぐにわかってくることですが、「これでなければいけない」ということはほとんどありません。母子別室にも、お母さんがゆっくりと休めるというメリットがありますから、しっかり体を休めて、おいしい母乳を飲ませてあげられれば、それもまたよしと考えましょう。

母乳育児を目指しているお母さんは、母乳指導をしている病院を選びましょう。一般に母乳指導とは、産前には母乳で育てていく上での知識や栄養指導を行ったり、おっぱいのマッサージ方法を教えてくれます。産後には、初乳をきちんと飲ませてあげる手助けや、乳頭のコンディションを整えたりしてくれます。さらに母乳育児におけるさまざまな質問や悩みに答えてくれます。母乳指導といっても、どこの病院でも同じ指導がなされているわけではありません。

 

母乳を出すための指導ではありますが、母乳を出すためのマッサージや予備学習をしながら、提携するミルク会社の栄養指導もあわせて取り入れている病院が多いことも事実です。ミルクがいけないというわけではありませんが、微妙に母乳指導の形がずれてきてしまうこともあります。望ましい母乳指導とは、母乳のみで育てていこうというお母さんの意思をリードしてくれる指導です。妊娠中期ころより検診の度におっぱいの状態もチェックして、出産に備えているところもあります。母乳育児に対する病院の姿勢をきちんと打ち出しているところを選びましょう。

 

乳頭が陥没していたり、扁平であったり、あるいは大きすぎたり、小さすぎたり、一見、とても赤ちゃんがお乳を吸ってくれそうに見えなくても、マッサージと強い意志で、母乳育児を進めていける可能性は決して少なくはありません。その可能性を示唆し、一緒に努力してくれる病院こそが望ましいといえます。母乳がなかなか出てくれない時や、赤ちゃんが飲んでくれない時、母乳育児を進めていくことはお母さんにとってつらくなることもあるでしょう。そんな時、寄り添って力になってくれる、母乳で育てていける自信を与えてくれる、そんな病院にめぐり合えたらいいですね。